ぼっちな彼女と色魔な幽霊


肩を落としている場合じゃない。

ベッドに向き直ると、「しっかし、色気のない部屋だなー」と、男の子は立ち上がり、わたしの部屋を物色していた。

本棚の前で、腰をかがめ、「漫画ねーのかよ?」と、文句までつけはじめる。

「少女漫画なら、あるよ。下のほう」

「少女漫画は漫画のうちにはいんねーよ」

仕方ねーな、といった手の動きで漫画を一冊とるとベッドに仰向けになり、読み始めた。

少女漫画をバカにするな。

……じゃなくて。

「……あの、あなた誰ですか?」と、わたしは確認のため訊いた。

「いや。誰かわかんないんだよね」

「……えっ?」

「お前は、名前なんつうの?」

「西宮ひな子です」

「ひな子ね」

「……あの質問です。人間ですか?」と、挙手して訊く。

「クマにでも見えるか。バカ」

イラッとする。そういう意味じゃなくて。

「生きてるかってことよ!」と、怒鳴ると男の子は身体を起こした。

あ。絶対怒らせた。わたしは少しのけぞる。よく考えたら部屋で男の子と二人きりなんて経験がないから恐かった。