「幽霊に看病される人間なんているんだな」
「うるさい。自分で食べるからいいよ」
翌朝、目が覚めたらヨウはベッドの中にいなくて、下の布団で眠っていた。
次に目が覚めたのは、ママがお粥を作って持ってきてくれたときで、ヨウも床に座ってた。
どうやら熱のあるわたしは風邪をひいたっぽい。
お粥を食べようとしたら、さじを落としてしまい、「仕方ねーな。食わせてやる」なんて偉そうに言うから、そのままお願いしたけど、食べづらい。
「やっぱり自分で食べる。なんかこういうのってさ……」
「はい、ばあさん。口あけろ」
「言うと思った」
「ばあさん良くならないと俺が餓死するからな。しっかり食えよ」
「死人のくせに」
ちょっと笑って、食欲ないから少し残した。
ヨウは食器をテーブルの上に置いて、またベッドの下に腰をおとす。
後頭部を引き寄せると優しくおでことおでこが触れた。
「……」
「俺、冷たいからよくわかんねーな」
「そ……そりゃそうでしょ」と、慌ててベッドの中に潜り込んだ。
でも、今じゃないと素直に言えない。
こうやってヨウに背中を向けてるときじゃないと言えない。
「昨日ありがと。一緒にいてくれて」
「あ?」
「朝までいてくれたんだよね」
「……なんでかわかんないけど、昨日は意識が遠のかなかったんだよな。なんか不思議だな」
「わたしが元気ないと、ヨウが生き生きしちゃうんじゃない?」
「そういうことか。じゃあ元気になってもらっちゃ困るな」
「意地でも回復する」
少し笑った。
「……なあ昨日のこと覚えてる?」
「昨日のこと?」
「寝る前」
「覚えてない」
「いいわ。なんでもない」
「変なの」
また目を閉じる。
わたしは今、戸惑っている。
この感情の変化に。
そうだとしたらさ。
なんて不毛なんだ。
カレー皿ででも蓋をしたくなるに決まってる。



