「あのさ。余計なお節介だと思うけどひとつ言っていい?」

「えっ?」

「あっ……ていうか才伽の好きな人知ってる?」

「いないって言ってたけど」

「なんだ仲良さそうに見えて、そんなものか。じゃあいいか」と、背中を向けるから呼び止めた。だってなんかすっきりしなくて気持ち悪い。

「才伽ちゃん、好きな人いるの?」

彼女は振り返って言う。

「西宮さんと同じ人だよ」

「……えっ? 二嶋くん?」と、口に出してからハッとした。

山下さんはわたしが口を滑らしたのが予想通りだったのか、ニヤリとした笑みを浮かべた。

「見てたらわかるでしょ?
あたし、才伽と中学一緒だったけど、そのときから好きなのバレバレだったよ。
そのせいで、女子から嫌われたくらいにね」

「二嶋くんを好きだと……どうして才伽ちゃんが嫌われちゃうの?」

「二嶋さ、中学んときモテたんだけど、みんなのものって感じだったの。
告白とか好きな態度は見せちゃいけないって、暗黙の了解みたいな。
なのに、才伽が空気読まないで、好き好きアピールしてたから、女子からハブられちゃったんだよ」

「……そんなルールのせいで?」

「そういうものじゃない? 友達って。ルール守れない奴は嫌でしょ?」

そもそもそんな暗黙のルールがおかしい。そう思ったけど、口をつぐんだ。

同時に才伽ちゃんが、同性の友逹を作らない理由がわかった気がした。そんなことで仲間はずれにされたなら、面倒くさくもなるだろう。

あんなにしっかりと自分の意見を持っているのだから、そういう子との関わり事態が、煩わしくなったのかもしれない。