家に近づくと、野菜を煮込むような香りが鼻をくすぐる。
ああなんか安心するな。
さっきの不安や恐怖も和らぐ。
本当に今のわたしにとっては、家こそが聖地かもしれない。
明日と思うだけで、心が重くなるから。
そう言いながら、また家でも学校のことについて考えてしまうのだけど。
「おかえりー。暇だったらお手伝いしてねー」と、キッチンの横の廊下を歩くわたしに気が付いてママが言う。
「わかったー」と、憂鬱を悟られないように元気に言った。
ママには友達できたとか、適当な嘘を吐いているものだから下手な顔はできないんだ。
突き当たりにある階段をのぼり、二階の自分の部屋に戻った。



