「お家の近く、海なんだ。だからよく遊びに行くよ」
「ひとりでも?」
「うんっ」と元気に頷くから、やっぱり人間の男の子だったんだと安堵した。
「そっかぁ。いいね。海の近くで、いっぱい遊べてね。じゃあわたしはもう行かないといけないから、ごめんね。ママのとこ戻りなね」
「そっかぁ忙しいの?」
「うん。ちょっとね頼まれたことあったから」
「おつかい?」
「そんなところかな?」
「お姉ちゃん、なんかあったの?悲しいの?」
「えっ?」
「うるうるしてるから」
「……」
「喧嘩したの?ママにね、弟と喧嘩したときよく言われるんだ。一番近くにいる人大切にしないでどうするのって!だからね、お姉ちゃんも一番近くにいる人大切にしないとダメだよ!」
「うん。ありがとう」
「約束ね」と手を挙げたから、真似するとわたしの手のひらを叩いた。
「またねー!」と花屋へ走って行った。
ハイタッチした手はしっかり温かかった。
一番近くにいる人を大切にかと、男の子の言った言葉をなんとなく噛み締めながら、信号を渡った。



