「えっ?」
「いやさ、うち親父いなくて。高校入ったら、バイトして好きなもん自分で買ってやるって決めてたから」
パパがいないんだ。
そういう家庭って普通にあるとは理解してるけど、わたしからは縁が遠くて、咄嗟に何て返していいかわからなくて何も言えなかった。
「まあ上に姉ちゃん二人もいるから、ただの騒がしい家なんだけどさ。
秀一に、お前の家はサファリパークだとか言われるし。
つうか酷いんだよ、あいつ。
あたし達姉妹のせいで女嫌いになったとか言ってくんの。ただ女にモテないからそれを言い訳にしてるだけなくせにさ。
ひどい話だよね」と、肩をすくめたから、ちょっと笑った。
「遠矢くんと、本当に仲いいんだね」
「はっ? そう見える?」
「だって、なんでも言い合えるし。それに……」
才伽ちゃん、女の子とは距離を置いてるから余計にそう感じるよと言いたくなったけど、自分の勘違いかもしれないしと言い淀んだ。
「ただのくされ縁だからね」
わたしの最寄駅に到着するアナウンスが流れた。
「ばいばーい」と、互いに手を振って電車を降りた。
それから、時間が経つごとに後悔みたいな気持ちに支配されてるって実感した。
「なにお前、気の利いたこと言えなかったとか悩んでんの?」
「……えっ?」
まさにその通りで、わたしは才伽ちゃんの家族の話を聞いてから何か一言、言ってあげれば良かったのかなとか、やっぱり友達のことで何かあったのかなとか、考えながら歩いていた。
だからヨウに話しかけれても少しぼんやりしていた。



