「サイテー」


昼休みの屋上。


あたしはフェンスに寄り掛かって何度目かのため息を吐き出した。


礼につねられた場所はまだ赤く、触れると痛かった。


「礼のことなんて気にする必要ないよ。和は絶対に野乃花の事が好きなんだから」


結菜はそう言うけれど、陰湿な攻撃をしてくる礼に対抗するとなると、勇気が必要だった。


「仮に両想いでも、礼が奪い取って行くよ」


あたしはそう言い、座ってお弁当を広げた。


結菜はあたしの隣に座り、困ったような表情をうかべて唸り声をあげた。


結菜も礼のやり方を知っているから、なんとも言えないようだ。


「野乃花、礼の中学校時代の噂を知ってる？」


「中学時代の噂？」


あたしはおにぎりを口に運びながら首を傾げた。


礼と知り合ったのは高校に入学してからだった。


妙に目立つ子がいるなぁと思っていたら、その素行はすぐにあたしの耳にも入ってきて関わらないようにしてきたのだ。


「中学の時の礼は、いつでも1人ターゲットを決めてイジメてたんだって」


「うわ、サイテー」


あたしは思わずそう言った。


だけど、礼ならやりそうだ。