入学式を終え、乃里花は母と別れると1人教室へと向かう。
当たり前のことではあるが、教室内も、廊下で話している生徒も女子しかいない。

「女子高って本当に女しかいないんだなぁ…友達できるかな」


「あっ、いたいた!乃里花!!」

「悠果っ!」

悠果は乃里花の教室の入り口で大きく手を振りながらぴょんぴょん飛び跳ねている。
乃里花は良く知った顔にホッとして、駆け足で悠果のもとに向かう。

「入学おめでとう!!本当に同じ高校だったんだね~!」

悠果は耳横の高さでツインテールにまとめていて、ほんわか可愛い印象を受ける。
会うたびに雰囲気が変わるなんて凄いなぁ…乃里花は心の中で思った。

「でさ、今日の夜ひま?」

「うん、ひまだよ」

「じゃ拓登んちで乃里花の入学祝いパーティやろう!!」

「えっ…」

拓登の家…突然の提案に乃里花は思わず言葉をつまらせてしまった。

「拓登すごい料理上手でね、あの腕の良さを誰かに披露しないと勿体ない……って、、あっ、、ごめん、乃里花、やっぱりこの前のことで苦手に思ってたら無理しなくても…」

さすがの悠果も気にしていたのだろうか、乃里花の少し困った表情に気が付くと言葉を濁す。

「ううん、そんなことないよ。ありがとう、喜んで行くね!」

「よかった。じゃぁまた後で連絡するね!」

悠果は安心したように微笑むと、嬉しそうにその場を後にした。
乃里花は小さく手を振って悠果を見送ると、不安になる心を抑えながら教室に入っていった。