終焉のフロンティア

新日本。それは経済が発展した世界での国の一つ。
新日本では、他国に比べて震災が多く発生していた。
そのため、それぞれの地方の中心となる県には『管理区』というものがある。
その内の......新東京都・管理区からある物語が始まる......。
世界の命運を賭けた......物語が。






二人の少年たちが森の中を歩いていた。
時は平日の昼。どこからどう見ても学生の彼らは本来学校のはずだ。
サボりなのかは不明だ。
そんな中、黒髪の少年が口を開いた。

「なぁ、尚弥。本当にこんなところにあるのか?」
「おう、勿論だぜ。俺は見たんだ。俺を信じろよ、輝」

輝と呼ばれた黒髪の少年は金髪の少年の言葉に少し戸惑いつつも頷く。

黒髪の少年の名前は、 七瀬 輝雪ななせ てるゆき。対して金髪の少年の名前は、 仲野 尚弥なかの なおやである。
輝というのは輝雪のニックネームである。大半の人物は彼を輝雪とは呼ばず輝と呼ぶ。

「しかし遺跡らしきものなんてどこにもないぞ。本当に見たのか?」

尚弥曰く三日前にここに来たら遺跡があったらしい。
俄に信じ難いことである。仮に遺跡が突如出現したのなら報道されるはずだ。
しかしそのような報道は一切されてないので輝雪は少し信じてはいなかった。

「あ〜信じてねぇな!俺がそんなくだらない事でお前を呼ぶか!?」
「中三の時、お前に騙されて先生に怒られたのですが?」

尚弥は輝雪の発言を聞くと口笛を吹いて誤魔化そうとする。
対する輝雪は軽く溜め息をつき先に進む。

「でも、呼び出しの時真剣な表情だったから信じてやるよ。親友としてな」
「流石の輝だな!俺の親友だけはあるぜ」

尚弥は輝雪の肩に肩を組むと共に歩き出す。

暫く歩き続けてるとある建造物を見つけた。

「......これがお前の言ってた?」
「ああ、そうだ」

ある建造物とは尚弥が指していた遺跡であった。
遺跡は高いわけではなかった。恐らく上に登るのとかではなく奥に進むものだろう。
しかも遺跡の入口は木で隠されているために見つけにくい。

「よーし!輝、入るぞ!」
「はぁ!?は、入る!?馬鹿言え。ここで大怪我でもして動けなくなったらどうするつもりなんだ!?ここは、森の奥深くだぞ!」

輝雪の言う通りこの遺跡は森の奥深くにある。だから大怪我などをして動けなくなったら誰も助けに来れない。

「なぁに心配ねぇよ。この尚弥様を信じろ!」

輝雪はお前の何を信じればいいんだと思ったが口に出さなかった。
ここで討論になるのを防ぎたいからだろう。

「わかった。でも、危険と判断したらすぐに出るぞ」
「おう!わかったぜ!」

輝雪と尚弥は頷くと木々をかき分けて遺跡の入口に入っていく。
遺跡に入ると一面に広い部屋が目に入った。
周りには様々な装飾があった。
とても古くからある遺跡だと、輝雪は思った。

「へぇ〜。結構広いなぁ」
「遺跡だからな。でもなんで西洋の文化が入った遺跡が日本にあるんだ?しかも東京に」

周りの壁には西洋風の装飾があった。
因みに、彼の成績は中の中なので普通の頭脳の持ち主だ。
対する尚弥は、不良なのに上の中と意外と成績がいい。

「にしてもさ、ずいぶんと広いな。迷わないといいけど」
「目印つけるか?適当に」


尚弥は適当な大きさの石を拾い壁に目印を付けるべく壁に傷をつける。しかしあまりにも広いためにこの目印を探すのは至難だろう。
入口付近は問題ないのだが大広間に出た瞬間に東京ドーム並の広さがあったのだ。
上からは確認出来ないと思うが相当な広さのはずだ。

「奥まで進むのに絶対疲れるな......このパターンは」
「でも、真っ直ぐな分まだいいと思うけどな?色々と部屋があるわけじゃないし」

輝雪の言う通りこの部屋は真っ直ぐにしか進めない。普通ならここで複数の部屋があるはずだがここには存在しない。

輝雪にはある謎があった。

(しかしここに来るまで一方通行だったな。普通なら分かれ道や部屋があってもいいはずだ。しかし、それがなかった。一体ここは何の遺跡なんだ?)

今までの来た道を謎に思っていた。来た道には分かれ道や部屋は無かったようだ。
因みに輝雪の遺跡のイメージは複数の部屋があるイメージである。

輝雪が考えていると

「うぉぉい!!」

突如として尚弥が背後で大声をあげたのだ。
思わずその大声に輝雪は考えを消し飛ばし尚弥の方を振り向く。

「輝!これを見てみろ!」
「何を見ろって......剣?」

尚弥が指を指した方向には紅い大剣が飾ってあった。
遺跡自体は古いはずなのに大剣錆びておらず新品のようにピカピカであった。
流石の尚弥も不思議そうな顔をした。


「まぁ、冒険に剣は付き物だよな!」

だが、尚也はなんのためらいもなく手に取ってしまった。確かに冒険に剣は付き物だが得体の知れないものなのに手に取るということは並大抵の勇気では無理だろう。
尚弥は勇敢なのか、それとも怖いもの知らずなのだろうか。

「尚弥〜。確かに付き物だけどさ普通得体の知れないものを掴むか?」
「まぁまぁ。それよりも俺に合ってるだろ?」

輝雪の言葉を簡単に尚弥は流すと大剣を振り回しつつ問いかける。

「そうだな。パワー重視のお前にはピッタリだな」(俺より頭いいのに脳筋だよな......)

輝雪はため息をつきつつも尚弥の問いかけに答える。
この時、輝雪にもなにか武器が欲しいと思った。
しかし、周りには尚弥の大剣以外に何も無かった。

「よし、尚弥。先に行こう。暗くなる前に帰りたい」
「お、そうだな。暗くなったら学校とかから連絡来るもんな。それに帰り道も怖いし」

尚弥の言葉通り、輝雪達は学校をサボってきているのだ。放課後までに帰らないと学校側から親に連絡される可能性がある。
放課後前、六時限前に帰ってくれば怒られるだけで済む。(成績はガタ落ちだが)
そして、輝雪達は歩き出す。

〜数十分後〜

輝雪達は長い廊下を歩いていた。あの大広間からとても長い廊下だこの先が最奥地だと輝雪と尚弥は感じ取った。

「そろそろ最奥地か?輝はどう思う?」
「多分最奥地だろうな。さっきの大広間にこの長い廊下だ。これで先があったら困るけどな。結構疲れた」
「お前は体力ないもんな!」

輝雪はとても息が切れていた。尚弥の言う通り輝雪は体力があまりないのだろうか。
対する輝雪は体力のなさを認めながらも尚弥の言葉にうるさいと答えた。

暫く歩き続けてると再び広い部屋に出た。
しかし先程の部屋に比べるとそこまで広くはなかった。

「なんだー?行きどまりかー?」
「そうだな。......っておい!尚弥!あれを見て!」

この部屋の先に道がないことから行きどまりと思っていた尚弥は輝雪の大声と指を指した方向を見て驚く。
なんとその指を指した方向には一人の人が倒れていた。
あまりにも遠くなので男性か女性が倒れているかはわからない。

「とりあえず、行こう!」

輝雪の言葉に尚弥は頷くと共に倒れている人に近づく。
その人は白髪の少女であった。
[image:40a2c6a87134507f0774 title:出会い]


(女!?どうしてこんなところに?)

尚弥は少女が倒れているのを見て不思議に思った。
それに輝雪達の前に人が入った痕跡はなかった。
仮に時がたったのなら少女の服装などが綺麗なわけが無い。

「ねぇ!しっかり!」(死んでないよな......)

輝雪は一生懸命少女の肩を揺らす。
暫くすると少女が目を覚ました。

「......ん」

白髪の少女は青い瞳を瞬きさせるとキョロキョロと見渡す。
対する輝雪と尚弥は安心したような表情になる。

「君は......誰なの?」
「私......?誰なんだろう。何も覚えてない」
「何も覚えてない?」(記憶喪失か......。何らかのショックなんだろうな)

二人が謎の少女を心配している中、輝雪は少女の近くにある物を見つけた。
ある物とは床に刺さっている青い刀身の剣である。

「なんでこんなところに刺さってるんだ?」(なんだ......物凄くウズウズするぞ)

輝雪は尚弥に引けを取らない程の好奇心旺盛である。
実は遺跡探索も内心ではワクワクしていたのだ。
だからこそ、輝雪は得体の知れない物に対してもワクワクしてしまうのだ。
それが目の前にある剣だとしても。

「......」

輝雪は剣の柄に手をかけた。
すると剣はスポンと音を立てて、簡単に抜けた。

「簡単に抜けた......」

輝雪が抜けて呆然としていると尚弥が何かを感じ遠くを見る。
尚弥の反応に少女も反応してそちらを向く。

二人が見た方向には黒い獣が立っていた。