2年後、兄貴が施設を出てきて、親父も刑務所から出てきた。

 2人は元の家で住んで、俺はばあちゃんの家に留まった。

 帰りたくなかったから…。

 ばあちゃんはいいよって俺を抱きしめてくれたから、安心してたんだ。

 …もし、もしこの時、俺が家に戻っていれば、ばあちゃんとじいちゃんは…。

 小6の冬。もうすぐ卒業式で、中学生。制服も買ってもらって、すげぇ浮かれてた。

「夏樹、しゃんとせんか!」

「あなた、夏樹が怖がってるわよ」

「お前が甘やかしすぎなんだ」

 試しに着てみた学ランはまだ大きくて、でも嬉しくてはしゃいでた。

 じいちゃんに怒られて、ばあちゃんに守られて。でも、怒ってても嬉しそうなじいちゃんにも抱き着いて、叩かれて笑ってた。

 そんな時に鳴り響いたチャイムの音。もう夜9時なのに。

「なんじゃ、こんな時間に…」

 ばあちゃんが玄関に向かって、じいちゃんは眉を潜めてる。

 俺は誰かに見られるかもと慌ててその場に座って大人しくなった。