ひとつの村が消えてしまった話をする

俺達は怖かったから、じいちゃん達に一緒に寝て欲しかったけど、そういう訳にはいかないらしい。

ともかく、2人だけで寝る事になった。

はじめのうちはテレビを見たり話したりして過ごしていた俺らも、だんだんと疲れが出てきて、いつの間にか眠ってしまった。

目が覚めたのは、何時頃だったろうか。

まだ辺りは暗かった。

何故起きたんだろうとぼんやり考えていると、外でガサガサと物音が聞こえた。

それと共に、あの呟きも聞こえる。

「……………もの……………もの………………もの……………………………もの……………もの………………もの………………」

心臓が一気に縮み上がったような感じだった。

蟀谷の血管が脈打ってるのが、はっきりわかった。

そのうち、窓ガラスが叩かれるようになった。

こんこん、こんこんという音と共に、

「…………さい…………さい」

という声が聞こえる。

ふと弟の方を見ると、いつの間にか起きている。

真っ青な顔で『にいちゃん、あれなんだろ。怖いよ』と震えている。

俺は弟のそばに寄り、そして窓の声へと集中した。

「あけてください……あけてください」

その声は、そう言っていた。

声色は、やはり人間の赤ん坊のものだった。

しかし、窓の外の影はとても幼児、いや人間のものではなかった。

しかし、その声をずっと聞いているうちに、こいつも必死なんだなという妙な気分になってきた。

と、弟が。

「ダメだよ、兄ちゃん!」

ハッ、と我に返った。

俺はいつの間にか、窓に近寄って開けようとしていたのだ。

一気に恐怖が戻ってきて、そのまま弟のところまで這って戻り、今度はひっしと抱き合った。

そのまま、まんじりともせず朝を迎えた。