「おい滋!」

「部屋の中を見ろ!」

俺は部屋の中を見た。

…中には葵が立っていたが、様子がおかしい。

こちらの方を見て、葵は両手を真横に上げている。

「葵!」

駆け寄ろうとした瞬間。

「っっっっっ!?」

人の形をした黒い影の様な『何か』が葵の背後から現れ、赤く濁った眼で俺を睨み、追いかけてきたのだ。

「!?」

俺は咄嗟に扉を閉め、黒く濁った塩を摑み、階段を駆け下りた。

下に落ちた滋は、落ちていた包丁を手にし、身構えていた。

「滋!逃げろ!」

「葵がいるんだぞ!」

「!!」

歯噛みする俺。

その時、和式便所のある方向からも黒い何かが近づいてきた。

「クソッ!」

滋は包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。