数分程度歩いた。

「獣の声とかしなくなったな」

「確かに、山犬の遠吠えとかも聞こえなくなった」

口々に話していると。

「どうした葵?」

葵の元気が無かった。

「…この獣道へ出た時から何か寒気がしてて」

「寒気?大丈夫か?」

「上着とか、貸すぜ」

葵はワンピース姿なので、夏の夜で寒いのも無理はないと思った。

「何かね、肌に直接くるような寒気じゃなくて、心に直接来るような寒気なのよ」

俺達は葵の状態が、良くない事に気が付き始めた。