「おい滋、まだ道に出ないのかよ?方向間違えて無いか?」

「方位磁針を使っているから、そうはならないと思うが」

「少し見せてみ」

「ほら」

滋の手の中の方位磁針を覗き込む俺。

「確かに、方向は合っているな」

「大丈夫なの?」

葵が不安そうに言う。

「ここまで入ってきた以上、今から帰るとしても森の中で迷うだけだから、獣道へ出るまで歩くしかない」

「そっか」

不安は拭えないまま、葵が頷く。

「行くぞ」

俺達は歩き出した。