ひとつの村が消えてしまった話をする

滋が開けた穴の入り口までは、なるべく人通りが少ない所を通って向かった。

「やっぱり、神主一族の人達が見回っているな」

はっきりとは見えなかったが、多くの人影が巡回しているように見えた。

「隙を見て行こう」

「先頭は滋君が行ってね、私達は場所を知らないんだから」

「分かった」

人影が穴の傍を離れた隙に、俺達は移動した。

俺は我先にと穴を潜ろうとした。

「おい滋!穴通りにくいぞ!」

「潜れば行けるって」

俺は服の背中を有刺鉄線に引っかけながらも、穴を抜けた。

滋と葵も難無く穴を抜け、森の中に入っていく。