「へぇ…。そんな人が世の中にはいるんだな。凄いな。でも…冬樹も、そんな凄い人に偶然助けて貰うなんて、ある意味運命だよなっ」
雅耶は、夏樹の話を聞いてしみじみと言った。
「本当にそうだよね…」
「でも、じゃあ…その人のお陰で、二人とも元の冬樹と夏樹に戻れたってことだな。でも、結局…冬樹はそのまま向こうに残ることになったのか?」
「うん。ふゆちゃんの希望でね。九十九さんは、ふゆちゃんの選択に任せるって言っていたんだけど、ふゆちゃんは出来れば向こうに残りたいって…」
そう微笑む夏樹が、少し寂しげに見えて。
「…お前は、それで良かったのか?」
雅耶は心配げに、夏樹を見下ろした。
「何で?良いに決まってるよ。ふゆちゃんの希望だもん。それに…。ふゆちゃんには、いつでも会いに行けるから…。それだけで、十分なんだ。今までの寂しさに比べたら、ふゆちゃんが笑顔でいてくれる。本当にそれだけで十分」
そう言って笑う夏樹に。
雅耶は何故だか切なくなって、横を歩く夏樹の頭をポンポン…と撫でた。
そうして二人歩きながら、駅前通りに差し掛かった所で、雅耶が突然思い立ったように「そうだ」と呟いた。
「夏樹、これから時間あるだろ?ちょっと『ROCO』に顔出さないか?昼飯もまだだろうし、何か食べてこうぜ」
そう言いながらも、既にお店の方へと入る路地を曲がろうとしている雅耶に。
「…う、うん」
夏樹は素直に頷きながらも、内心では少しだけ緊張していた。
あの神岡を逮捕した夜の翌日。
夏樹は、いつも通りバイトの予定が入っていた。
だが、色々とやるべきこともあり、九十九の元へ冬樹達と一緒に行くことになった夏樹は、バイトに出れない旨をお店へ直接伝えに行った。
だが、それは…ただ休暇を願い出ることとは違う。
次に、こちらへ戻って来る時は『野崎冬樹』ではなくなっている…ということが、前提にあったからだ。
その日、冬樹にも同行して貰い、夏樹は直純の元へ挨拶に行った。
今まで、身を偽っていたことへの謝罪。そして伝えきれない程の感謝の気持ち。
だが、直純は…本物の冬樹の登場に驚きはしたものの、真実を伝えてもあっさりと状況を受け入れてくれた。
そして、実は自分は冬樹が夏樹であることをずっと知っていたと逆に暴露され、夏樹の方が驚かされた程であった。
そうして直純は、夏樹に言ったのだ。
「こっちに戻ってきたら、絶対顔出せよな?待ってるからな」
そう、いつもの優しい微笑みを浮かべながら…。
雅耶は、夏樹の話を聞いてしみじみと言った。
「本当にそうだよね…」
「でも、じゃあ…その人のお陰で、二人とも元の冬樹と夏樹に戻れたってことだな。でも、結局…冬樹はそのまま向こうに残ることになったのか?」
「うん。ふゆちゃんの希望でね。九十九さんは、ふゆちゃんの選択に任せるって言っていたんだけど、ふゆちゃんは出来れば向こうに残りたいって…」
そう微笑む夏樹が、少し寂しげに見えて。
「…お前は、それで良かったのか?」
雅耶は心配げに、夏樹を見下ろした。
「何で?良いに決まってるよ。ふゆちゃんの希望だもん。それに…。ふゆちゃんには、いつでも会いに行けるから…。それだけで、十分なんだ。今までの寂しさに比べたら、ふゆちゃんが笑顔でいてくれる。本当にそれだけで十分」
そう言って笑う夏樹に。
雅耶は何故だか切なくなって、横を歩く夏樹の頭をポンポン…と撫でた。
そうして二人歩きながら、駅前通りに差し掛かった所で、雅耶が突然思い立ったように「そうだ」と呟いた。
「夏樹、これから時間あるだろ?ちょっと『ROCO』に顔出さないか?昼飯もまだだろうし、何か食べてこうぜ」
そう言いながらも、既にお店の方へと入る路地を曲がろうとしている雅耶に。
「…う、うん」
夏樹は素直に頷きながらも、内心では少しだけ緊張していた。
あの神岡を逮捕した夜の翌日。
夏樹は、いつも通りバイトの予定が入っていた。
だが、色々とやるべきこともあり、九十九の元へ冬樹達と一緒に行くことになった夏樹は、バイトに出れない旨をお店へ直接伝えに行った。
だが、それは…ただ休暇を願い出ることとは違う。
次に、こちらへ戻って来る時は『野崎冬樹』ではなくなっている…ということが、前提にあったからだ。
その日、冬樹にも同行して貰い、夏樹は直純の元へ挨拶に行った。
今まで、身を偽っていたことへの謝罪。そして伝えきれない程の感謝の気持ち。
だが、直純は…本物の冬樹の登場に驚きはしたものの、真実を伝えてもあっさりと状況を受け入れてくれた。
そして、実は自分は冬樹が夏樹であることをずっと知っていたと逆に暴露され、夏樹の方が驚かされた程であった。
そうして直純は、夏樹に言ったのだ。
「こっちに戻ってきたら、絶対顔出せよな?待ってるからな」
そう、いつもの優しい微笑みを浮かべながら…。



