翌日の昼休み。
早めに昼食を終えた冬樹と雅耶と力の三人は屋上に来ていた。
詳しい話を聞かせて貰う為、力を呼び出したのだ。
三人が屋上へ出てみると、昨日と同様に上級生達がたむろしていたが、冬樹の姿を確認するや否や、皆がギョッとしてそそくさとその場から立ち去って行った。冬樹は全然気にもしていない様子だったが、力はその上級生達がいなくなるまでは、若干肩をすくめて小さくなっていた。
そんな様子を横で見ていた雅耶は、逃げるように去って行くその集団を見送りながら、小さく溜息を吐いた。
(…あいつらか、昨日冬樹に絡んでのされた奴等は…。大の男五人があんなに怯えて逃げるなんて。いったいどれだけ手酷く痛めつけられたんだか…)
勿論、奴等の自業自得ではあるが、思わず哀れみの目で見てしまうのはやむ負えないだろう。
何せ、相手はこんなに見た目儚げな『少年』なのだから。
目の前で、風に吹かれて髪をなびかせている冬樹の綺麗な横顔を眺めながら雅耶は思った。
「昨日、お前が言っていた話…詳しく聞かせて貰えないか?」
本題に入ると、冬樹は思いのほか硬い表情をしていた。
そんな冬樹に力は小さく笑うと、
「こんな風に改まって呼び出さなくても。…ま、俺に分かることなら何でも教えてやるけどな」
そう言って肩をすくめて見せた。
「じゃあ、父が開発した薬について…。それが何の薬かは知ってるか?」
控えめに質問を口にする冬樹に、力は最初から首を横に振った。
「いや、悪いがそれは知らない。薬の種類までは流石にな。でも親父は昔、心臓か何かの病気に効く薬を研究して作っているんだと話してくれたことがある」
「…心臓…。でも、その薬のデータのことでオレが狙われてるって昨日言ってたよな?何でそんなことをお前が知ってるんだ?」
今度は警戒を露わにして、冬樹が尋ねる。
そんな冬樹の様子に、力は再び小さく笑った。
「そうだな…。お前が狙われてる事は公になってないもんな。それを俺が知ってること自体、十分怪しいと思うのが普通だよな?」
自嘲気味に話す力に、誤魔化しは許さないという意志を示すように、冬樹は真っ直ぐな瞳を向けた。
そんな冬樹の視線をそのまま受け止めて、力は一呼吸置くと、ゆっくりと口を開いた。
「そこに、もしかしたら親父が絡んでいるのかも知れない」
「………え…?」
思いもよらない言葉が返って来て冬樹は目を丸くした。
だが、そんな反応は予測済みだったようで、力は淡々と言葉を続ける。
「そして、多分…。親父もそのデータを欲しがっている…」
早めに昼食を終えた冬樹と雅耶と力の三人は屋上に来ていた。
詳しい話を聞かせて貰う為、力を呼び出したのだ。
三人が屋上へ出てみると、昨日と同様に上級生達がたむろしていたが、冬樹の姿を確認するや否や、皆がギョッとしてそそくさとその場から立ち去って行った。冬樹は全然気にもしていない様子だったが、力はその上級生達がいなくなるまでは、若干肩をすくめて小さくなっていた。
そんな様子を横で見ていた雅耶は、逃げるように去って行くその集団を見送りながら、小さく溜息を吐いた。
(…あいつらか、昨日冬樹に絡んでのされた奴等は…。大の男五人があんなに怯えて逃げるなんて。いったいどれだけ手酷く痛めつけられたんだか…)
勿論、奴等の自業自得ではあるが、思わず哀れみの目で見てしまうのはやむ負えないだろう。
何せ、相手はこんなに見た目儚げな『少年』なのだから。
目の前で、風に吹かれて髪をなびかせている冬樹の綺麗な横顔を眺めながら雅耶は思った。
「昨日、お前が言っていた話…詳しく聞かせて貰えないか?」
本題に入ると、冬樹は思いのほか硬い表情をしていた。
そんな冬樹に力は小さく笑うと、
「こんな風に改まって呼び出さなくても。…ま、俺に分かることなら何でも教えてやるけどな」
そう言って肩をすくめて見せた。
「じゃあ、父が開発した薬について…。それが何の薬かは知ってるか?」
控えめに質問を口にする冬樹に、力は最初から首を横に振った。
「いや、悪いがそれは知らない。薬の種類までは流石にな。でも親父は昔、心臓か何かの病気に効く薬を研究して作っているんだと話してくれたことがある」
「…心臓…。でも、その薬のデータのことでオレが狙われてるって昨日言ってたよな?何でそんなことをお前が知ってるんだ?」
今度は警戒を露わにして、冬樹が尋ねる。
そんな冬樹の様子に、力は再び小さく笑った。
「そうだな…。お前が狙われてる事は公になってないもんな。それを俺が知ってること自体、十分怪しいと思うのが普通だよな?」
自嘲気味に話す力に、誤魔化しは許さないという意志を示すように、冬樹は真っ直ぐな瞳を向けた。
そんな冬樹の視線をそのまま受け止めて、力は一呼吸置くと、ゆっくりと口を開いた。
「そこに、もしかしたら親父が絡んでいるのかも知れない」
「………え…?」
思いもよらない言葉が返って来て冬樹は目を丸くした。
だが、そんな反応は予測済みだったようで、力は淡々と言葉を続ける。
「そして、多分…。親父もそのデータを欲しがっている…」



