キラキラと光る水面。
打ち寄せる波の音。
歩くごとに素足が埋もれる、さらさらとした感触の砂浜。
目の前に広がる、どこまでもどこまでも続く水平線。
(海に来たのなんて…。すごく久し振りだ…)
冬樹は、その目の前に広がる景色を一人立ち尽くしたまま、暫く眺めていた。
流石に夏休みとあって、平日でも多くの海水浴客で賑わってはいたが、イモ洗い状態…という程でもなく、変な見苦しさはない。
(わりと穴場の海水浴場なのかも…。砂もキレイだし…)
皆が着替えに行っている間、荷物番を引き受けた冬樹は、誰だかが持ってきたレジャーシートの上に皆の荷物を乗せると、その横に立ったまま海を眺めていた。
『冬樹チャン、水着に着替えないのっ?』
自分が荷物を見ておくと伝えると、長瀬が不満そうに口を尖らせた。
『だってオレ、水着なんか持ってねーもん』
こちらも不機嫌一杯に答える。
『でも、水着なんかそこら辺の売店でも売ってるぜ?』
『男物の水着なんて、結構安いんじゃね?』
と、他のメンバーも余計なことを言っていたが、自分はこのままで良いと意見を曲げなかった。
(…当然だろ?男物の水着なんか着れるかってーの!)
『海水浴』や『プール』なんてモノは、今の冬樹の辞書には無い。
当然、成蘭高校に水泳の授業がないということも、バッチリ下調べ済みだった。
実際は、海水浴などに誘われるようなこと自体、この八年間には一度もなかったし、そんな仲間さえいなかったというのが本音なのだが。だから、尚更…もう数年も海へと足を運ぶことなどなかったのだ。
理由は、それだけではないのだけれど。
(…でも、そんなに浮いてはいないよな…?)
流石に皆で海に来ていて、一人しっかり着込んでいたら、それはそれで恥ずかしい。
冬樹は、サファリハットに白の半袖パーカー、薄手のハーフカーゴパンツという服装だった。このまま少しぐらい水遊びしても良いように、着替えも一応持ってきてある。ラインの出にくい水着とラッシュガードを着る…という手も考えたが、流石に危険を伴いそうなのでやめた。
(第一、そんなの買ってたらお金が勿体ないってーの。強引な手を使ってきた、諸悪の根源である長瀬が全部悪い!)
その諸悪の根源から『雅耶』の名前は、ちゃっかり消えているのだった。
打ち寄せる波の音。
歩くごとに素足が埋もれる、さらさらとした感触の砂浜。
目の前に広がる、どこまでもどこまでも続く水平線。
(海に来たのなんて…。すごく久し振りだ…)
冬樹は、その目の前に広がる景色を一人立ち尽くしたまま、暫く眺めていた。
流石に夏休みとあって、平日でも多くの海水浴客で賑わってはいたが、イモ洗い状態…という程でもなく、変な見苦しさはない。
(わりと穴場の海水浴場なのかも…。砂もキレイだし…)
皆が着替えに行っている間、荷物番を引き受けた冬樹は、誰だかが持ってきたレジャーシートの上に皆の荷物を乗せると、その横に立ったまま海を眺めていた。
『冬樹チャン、水着に着替えないのっ?』
自分が荷物を見ておくと伝えると、長瀬が不満そうに口を尖らせた。
『だってオレ、水着なんか持ってねーもん』
こちらも不機嫌一杯に答える。
『でも、水着なんかそこら辺の売店でも売ってるぜ?』
『男物の水着なんて、結構安いんじゃね?』
と、他のメンバーも余計なことを言っていたが、自分はこのままで良いと意見を曲げなかった。
(…当然だろ?男物の水着なんか着れるかってーの!)
『海水浴』や『プール』なんてモノは、今の冬樹の辞書には無い。
当然、成蘭高校に水泳の授業がないということも、バッチリ下調べ済みだった。
実際は、海水浴などに誘われるようなこと自体、この八年間には一度もなかったし、そんな仲間さえいなかったというのが本音なのだが。だから、尚更…もう数年も海へと足を運ぶことなどなかったのだ。
理由は、それだけではないのだけれど。
(…でも、そんなに浮いてはいないよな…?)
流石に皆で海に来ていて、一人しっかり着込んでいたら、それはそれで恥ずかしい。
冬樹は、サファリハットに白の半袖パーカー、薄手のハーフカーゴパンツという服装だった。このまま少しぐらい水遊びしても良いように、着替えも一応持ってきてある。ラインの出にくい水着とラッシュガードを着る…という手も考えたが、流石に危険を伴いそうなのでやめた。
(第一、そんなの買ってたらお金が勿体ないってーの。強引な手を使ってきた、諸悪の根源である長瀬が全部悪い!)
その諸悪の根源から『雅耶』の名前は、ちゃっかり消えているのだった。



