屋上カメラマン

「こんな写真が撮れたら楽しいでしょうね」

 ドンのことを少し見直した。

「楽しいよ」

 トンは笑う。しかしすぐにその笑いを引っ込め、唐突に意外なことを言い出した。

「でも、僕は今日で引退するんだ」

「引退? 今日!?」

 そんな大切な日に、俺はドンの邪魔をしてしまったのか。

「うん。今日で引退だ。それで、君にどうしても頼みたいことがあるんだ」

 ドンの真剣な表情を見て、にわかに緊張してきた。

 俺に頼みたいことって一体どんなことだろうか?

  耳を済ませ、ドンの次の言葉をじっと待った。






「──屋上カメラマンにならないか」

 俺がそう言うと、案の定、彼女は首をかしげた。これは当然の反応だと思う。突然こんなことを言われて「はい」なんてすぐに返事ができるやつは、きっとどこにもいないだろう。

 この願いを今この場で承諾してもらう必要はない。これから彼女をカメラ部の部室に連れていき、そこで全てを説明して、どうするかはその後で彼女が決めればいい。