屋上カメラマン

 その写真には中庭でバレーをする生徒たちが撮られていた。右端には顔が半分切れた俺も写っている。

 正門の近くの花壇の側で、一人素振りをしている野球部員。風で浮き上がったスカートを慌てて両手で押さえる女子生徒。風に激しくなびく校旗。木の枝にぶら下がっている男子生徒。ベンチを雑巾で拭く用務員のおじさん。

 見慣れた普段の学校の風景。普段は気が付くことのできなかった以外な風景。様々なものがそこにはあった。

「いいだろ、それ。昼休みになると皆が輝きだすんだ」

 ドンが自慢げに言う。確かに皆輝いている。掃除中の用務員のおじさんまでもが、どことなく楽しそうだ。

「こんなにたくさんの写真、全部先輩が撮ったんですか?」

「僕だけじゃない。僕の先輩も、そのまた先輩も、昼休みになる度に写真を撮ってきたんだ。これがこの学校の隠れた伝統なんだ」

「へぇ……知らなかったなぁ」

「現像代もばかにならなくて、部費だけじゃやっていけないから、けっこう大変なんだぜ。昼休みに遊ぶこともできなくなるしね」

 僕はもともと教室で本を読んでただけなんだけど、と付け加えて可笑しそうに笑う。