ーカチャー


もうこの家に帰ることはない。
この家にさよならしなくちゃ。

「綾(アヤ)行くわよ」

今日から隣町の中学校に通うことになった中学二年生の上島綾(ウエシマアヤ)。


転校する理由は親の仕事の問題。
お父さんの会社が移動することになって交通費が高いからってことで隣町に引っ越してきた。


中学一年生の時は友達もいてなんだかんだ楽しく過ごせていた。

だから少しだけ寂しい。
仲良かった友達と離れることは。

「はーい」

人生の初の転校はかなり不安。転校先の学校で友達できなかったらどうしようとか、嫌でも考えてしまう。

そしてあっという間に新しい家に着いた。
二階建ての一軒家。
「すごい!綾姉こっちの部屋来て!広いよ!」
テンションマックスの妹、華(ハナ)に無理矢理腕を引っ張られ連れてこられた部屋。
「本当だ、広い。広すぎる!」
感動するくらい広すぎる!でも広いのはこの部屋だけではなかった。家の中を妹と走り回るようにぐるぐる回って全部の部屋を見てきたところ、どこの部屋も最初見た部屋の広さは当たり前のようだった。

「ねえお母さん、私の部屋ってどこ?」

一つ気になることがあった私はすぐに筆問する。
まだ決めてないらしく、家族四人でゆっくり一つ一つの部屋を見て決めることになった。二階に上がる階段を上って廊下を歩くとすぐ右にある部屋が私の部屋。その逆、左の部屋は華の部屋。そしてそのまま廊下をまっすぐ歩いて行ったところにある部屋がお母さんとお父さんの部屋。一階はリビング、台所、トイレ、お風呂場、和室となっていた。

「今日は新しい家に引っ越したんだし引っ越し祝いということでバーベキューでもするか!」

お父さんの提案にみんな賛成して、その日はお肉!お肉!お肉!だった。