委員会があるたび、私と加藤隼人は目を合わせた。無視してしまった罪悪感で彼を気にしていた。
目を合わせた時に悲しそうな目をするのがいつも辛くて、ちゃんと謝る機会が欲しかった。

12月。カルタ大会は文化委員が1番忙しい時期。組み合わせを考えてトーナメント表を作らなければいけなかったり、カルタの枚数を数えたり仕事は山積みだった。
チャンスは2回あった。
まずカルタの枚数合わせ。委員が集まって抜けている札はないか確認する。集中しなきゃいけない作業だけどきっとみんなお喋りしながらするだろう。
多目1の教室に入り、全員が座ったことを確認し、この作業の説明をする。その時にさりげなく加藤隼人の席を確認。隣は空いている。全員に札を配り終えたところで隣に座る。
やっと話せるチャンスが、来ない。
委員を甘く見ていた。割と不真面目な人が集まっている委員会だが、この1枚1枚確認する作業では誰一人口を開かなかった。
こんなところで「彼氏いるかどうかの質問、無視しちゃってごめんね!」なんて言えるわけがない。寧ろ隣に座ったせいですごく気まずかった。作戦は失敗。
次はトーナメント表作成。事前に委員にくじ引きをしてもらう。大まかな対戦はここで決まる。くじ引きを委員長が各クラスに回れば、加藤隼人と話せるチャンスが回ってくる。
と思っていた。「くじ引き、お前が最後だよ。」と顧問が私のクラスに回ってきた。
「え?」
「俺が回っておいた。」
普段は仕事やらないくせに余計なことを!
「ありがとうございます…。」
「でだ、ここからがお前の1番の大仕事。」
何故かドヤ顔。
「何でしょうか。」
「このくじ引きの結果を生徒会室のパソコンに打ち込んで組み合わせてもらう。その時絶対に同じクラス同士であたったり、1回戦目と2回戦目で同じところ同士が対戦する場所があるから、そこの場所調整をやってもらう。」
パソコン作業なら得意中の得意。生徒会室に行かなきゃいけないのが苦だが。
「ん?先生。もし被ってたところを見つけたらどうすればいいんですか?」
「お前の好きに組み替えて良いよ。」
と、いうことは。
「わざと好きな奴とお前のチーム対戦させるなよ〜?」
ありがとうクソアフロ!これで加藤隼人と、私のチームを対戦させて、話すチャンスを作れる!
「わかりました!じゃあトーナメント表作成行ってきます。」
小走りで生徒会室へ向かう。最後の泣きの1回のこのチャンス。絶対逃すわけにはいかない。普通に話せるようになりたい。