隼人くんからの連絡を待っている間、私は何故か不安だった。「隼人くんが取られてらどうしよう。」私の中にはあってはいけない感情。好きな人は作らない。そもそも付き合ってもいないのに「取られる」はおかしい。
でも、怖かった。ずっと私のことを好きでいてくれる。そう思っていたから、何度も心変わりしていたという隼人くんの気持ちを聞いて、不安でいっぱいだった。
それに私のことは「藍海ちゃん」と呼ぶのに対し、佐那ちゃんのことは「佐那」と呼んでいた。佐那ちゃんも隼人くんのことを「隼人」と呼んでいた。
心の距離が目に見えてくる。辛かった。
私はまた、隼人くんの彼女づらを勝手にしてしまっていた。これで3度目だ。
好きな人は作らないと決めたのに、隼人くんのことを好きになっていた。これだから好きな人はいらない。傷付きたくないからそう決めたのに、また自分を苦しめた。
隼人くんから電話がかかってくる。
「もしもし、藍海ちゃん…泣いてる?」
気付いたら涙が出ていた。
「藍海ちゃん!待ってて!今から家行くから!」
「えっ、待ってなんで私の家」
「俺のストーカー力なめんなよ!!!」

家の外で30分程待っていると、本当に隼人くんがきた。
「藍海ちゃん!」
隼人くんの匂いと体温に包まれる。
「隼人くん、あのね、私、隼人くんのこと、好きになっちゃったよ。隼人くんが取られるって、不安になって、怖かった。」
泣いてるせいでうまく話せない。
「藍海ちゃん、俺」
「あのね。」
なにか言いかける隼人くんの言葉を遮る。
「嫉妬した。佐那ちゃんのことは佐那って呼ぶのに、私のこと、ちゃん付でしょ。」
顔を見上げると、隼人くんは笑っていた。そして抱きしめる力が強くなる。
「可愛いな本当に。藍海、俺のこと悪く言うあいつから守ってくれたんでしょ。ありがとう。すごい嬉しかった。今度は俺が藍海のこと傷つける奴らから守るから。だから、側にいてください。」
隼人くんのことなら、信頼してもいいですか。
上を見上げて静かにキスをした。