そこには、夏芽がいてその隣には初めて見る男の子がいた。
といっても、私はほとんど学校の人を覚えていないから本当に初めて見たかは定かではないけど…。
「あれ?珍しいね、蛍が誰かといるなんて。」
『私は別に…。そっちこそ、何してるの?』
鳴海とのさっきのことを話すにはいかなくて少し口ごもってしまった。
「あっ、そうそう!そちら私のクラスに転校してきた有川 優(アリカワ ユウ)くん。私が隣の席だから案内をね。」
『そうなんだ。』
彼を見ると、優しいそうに微笑んでいた。彼もまた鳴海と同様でとても顔が整っていた。
でも、鳴海よりは無愛想じゃない。
私にそう言うと、夏芽は今度有川くんに私のことを紹介しようとした。
「有川くん、この子は『夏芽のこと、よろしくお願いしますね。』
私はそれを遮って、有川くんに少しだけ頭を下げた。
顔をあげると夏芽は悲しそうな顔をしていた。
「うん。君もよろしくね。名前、なんて言うの?」
なんだこの人。
私は思い切りそれが顔に出ていたようで、有川くんはは小さく笑って
「亜羅汰と仲良くなってるなら、僕とも仲良くなってくれてもいいんじゃない?」
ねぇ?なんていいながら有川くんは鳴海の方を向いた。
鳴海は有川くんを見て少し面倒くさそうに小さく頷いた。
『いや、仲良くないですから。
では、私はもう帰りますので、バイバイ夏芽。』
「ちょ、ちょっと蛍?!」
私がその場からいなくなろうとすると、また強く腕を引かれた。
「おい。蛍。」
『っ!』
なんで、
なんであんたが、
『私の名前…勝手に呼ばないでよ。』
小さく言うと
「生憎、自己紹介されてないから友達に呼ばれてた下の名前しかわからないんでな。」
ふざけんな。
なんで、
むかつく。
今日会ったばかりなのに。
このだんだんと音を大きくする胸も
だんだんと熱を帯びる掴まれた手も
ほんっとにむかつく。
私は、その手を振り払って走って昇降口に向かった。

