休み時間に入って私の隣の席には女子で覆い尽くされていた。

「鳴海くんってどこから来たの?」

「彼女とかっていたりするの?」

「学校案内私がしてあげる!」

「私と行くよね!?」


甘甘な声で転校生に詰め寄っていく女子達。
当の本人はとても迷惑そうだけど。


「けーーーーいーーーーーー!!!!!」


私の名前を呼ぶ声にその声が一気にしらけた。

女子全員の視線が教室のドアのほうを向いている。

私が立ち上がると近くにいた女子は少しだけ体をずらした。

気にしない。

もう、慣れた。

教室のドアのど真ん中で1人の美人が仁王立ちしている。


『夏芽…仁王立ちはやめなさい。』

「仁王立ちをさせてるのはあんたでしょうが!」


そう言いながらも仁王立ちを直すこの美人は森下 夏芽(モリシタ ナツメ)。
私のこの学校での唯一の友達。


「あんたまた先輩に呼び出されたんだって?また、勘違いされたの?」

『また私は人の彼氏を取ったらしいよ。』


少しおどけて言うと後ろからヒソヒソとまた話し声が聞こえる。

ここがまだ教室だということを忘れてた。

また、新しい噂が増えるな、なんてそんなことしか考えられないけど。


「蛍。」


そんな私を心配そうに見る夏芽。


『いつものことじゃん?』


私は少し夏芽と距離をとる。


『夏芽も早く戻りな。次の授業はじまるよ?』


私が笑顔でそういうと、納得がいかない顔で夏芽は頷いて帰っていった。


「森下さんって怖いよね。この前睨まれたんだけど。」

「私も〜。さすが村田さんと友達なだけあるよね。」

「森下さんも村田さんと一緒でタラシらしいよ。」


私は黙っていられなかった。
私は無言でその子達に近づいた。


「な、なによ。なんか用なわけ?」


リーダー的存在の子がどもりなからも睨みつけてきた。

私は小さく息を吐いた。


『私は何を言われても気にしない。でもね、気に入らないことはあるの。それはね…』


一度言葉を止めて、私はその子の頬をひっぱたいた。

大きな音が教室に響いて、みんなの視線が全員こっちを向いた。


『私の友達のことを悪く言うのだけは絶対に許さない。』


私は他の女子にも目を配らせた。


『これから、夏芽のこと悪く言ったり、夏芽に何かしてみなさい。ただじゃおかないから。』


そう言ってもう一度悪口を言っていた女子を睨みつけ、私は席についた。

隣の席の鳴海は興味が無いかのように本を読んでいた。

いつの間にか彼の周りに女子はいなくなっていた。