放課後になって私は一人で図書館に向かっていた。
何故だか、図書館に行って、あの人と話したいと思った。
夏芽には飲み物を買いに行った2人に伝えといてともお願いしたから、この前のように探されるということはないだろう。
1ヶ月ぶりの図書館は相変わらず静まり返っていた。
でも、やっぱり彼がいた。
「あ、この前の子だ。」
そう言ってこっちを見て微笑むやつ。
『この前はどうも。…お陰様で午後の授業全部受けれませんでした。』
「あちゃー、やっぱり放課後まで寝ちゃってたか。」
『起こしてくれるって言ったじゃないですか。しかも、授業サボるやつを見張ってるって言ってたくせに。』
「ごめんごめん。悪かったよ。起こそうと思ったけど、随分と気持ちよさそうに寝ちゃってたし…それに寝顔可愛かったから。」
そう言って私に向かって微笑んだ。
私は自分の顔に血が上ったことが分かった。
『なっ!何言ってるんですか?!しかも、ね、寝顔見たなんて!セクハラです!』
「せ、セクハラ?!」
『そうよ!セクハラよ!しかも、起こさないなんて学校で働く者として有り得ない!』
そう言うと、管理人さんは少し困ったような顔をした。
彼のメガネの奥の瞳が陰った。
『…ど、どうしたんですか?』
「…いや、僕は…人を探してるんだ。」
その言葉に、胸がドキリと音を立てた。
「年齢がね高校生だから、ここら辺の高校を手当り次第で探してるんだ。」
鼓動がだんだんと大きくなっていくのを感じる。
「って、相手が僕のこと覚えてるわけもなく、俺もよく顔を覚えてないから名前で探すしかないんだけどね。」
話しているうちに、表情も声も優しくなって、第一人称が〝俺〟になっていることは彼は自分でわかっているのだろうか。
「…あ、そうだ。君の名前、まだ教えて貰ってなかったよね。」
なぜだか、彼に教えてはダメな気がした。
『…な、名前は…』
どうしよう。
ていうか、まず、どうして管理人さんに会って相談しようと思ったのか。
自分でもわからない。
ただ、会って話したいと思った。
「??どうしたの?」
『…あ、あの、まずは自分から名乗るのが筋ってもんでしょーー!!!』
少々無理やり感が否めないが、彼は少し笑った後に
「僕の名前は 雛森 隼人(ヒナモリ ハヤト)。宜しくね?」
で、君の名前は?と手を差し伸べてくる。
ひなもり はやと
覚えてない。
でも、どこか懐かしい。
その手を掴んで、自己紹介をする前に図書館の扉は荒々しく開けられていた。

