4人で初めて放課後に出掛けた日から1週間が経った。

4人とも下の名前で呼び合うことに慣れて、何故か朝から放課後まで4人で行動していることが多い。

でも、関係性は最初から変わらず


「なんで優とバカ夏芽がクラスにいんだよ。」

「ちょっと!今バカって言った?!誰に向かってバカって言ったの?アホ亜羅汰!」

「夏芽だよ!なーつーめ!」

「むかつくーー!!ねぇ!優くん!亜羅汰ムカつくよ!!」

「まぁまぁ、2人とも朝から騒がないの。」

『…優、保護者みたい。』

「蛍、それはちょっと勘弁して。」

「「どういう意味?!」だよ!」


2人でハモって、また睨み合う夏芽と亜羅汰。

それを楽しそうに見つめる優。

そんな4人の関係性に居心地さえ良いと感じ始めた頃だった。


ガサッ

私が机に教科書を入れようとすると、奥に何かが詰まって入らない。

手を入れて探ってみると、そこには一枚の紙が入っていた。

私以外の3人は話をしてて気づいていない。

グシャグシャになってしまった紙。

真っ白な紙で、何気なく裏返してみて自分でも驚くほどの速さで握り潰した。


「…どうした?」


私の変化にいち早く気づいたのは亜羅汰だった。

私が首を横に振ると、訝しげにこっちを見たが何も言わずに夏芽と優との会話に戻っていった。

私は紙に書いてあったことを頭の中で反芻していた。


〝ずっと見てるから。〟


誰からかなんて検討もつかない。

私のことを恨んでいる人なんて沢山いる。

ストーカーの可能性もなくはない。

でも、

(皆に迷惑かける訳にはいかない。)

やっと手に入れた、居心地がいい場所。

それが崩れていく恐ろしさを知っているからこそ、もう居場所を作ることをやめたはずだったのに。

自分では気づかないうちに、ずっとずっと大事になってしまった。

この関係を壊したくないと手の中の紙を強く強く握り締めていた。