家に着くと相変わらず家は暗かった。


「ここが蛍んちか、よし覚えた。」

『覚えないで。もう来ることもないでしょ。』

「いや?毎回帰りは送ってやるから、ありがたく思えよ?」

『嘘でしょ?一切有難くないんだけど。てか、迷惑の間違えでしょ?』

「あ?言ったな?」


そう言うと、急に私の髪をぐしゃぐしゃと掻き乱した。


『ちょっ!やめて!頭もげる!!』

「うるせぇ!くらえ!!」


更に頭がもげそうなほどぐちゃぐちゃにされ、私がヘロヘロになった頃手が止まった。


「…あのさ。学校で…やっぱ何でもねぇ。」

『??…なに?』


亜羅汰が何か言いたそうにして口を噤んだ。


「なんでもねぇよ。じゃあな。また明日学校でな。」

『うん。』


私は素直に頷いていた。

そして、言い忘れていたことを思い出し亜羅汰を追いかけた。

亜羅汰の背中が見え、言いたかったことが何故だか恥ずかしくなり口ごもったけど声を出した。


『ご馳走様。あ、ありがとうね。亜羅汰。』


小さくなって聞こえるはずないと思ったのに、亜羅汰は振り返って笑った。


「感謝の言葉はもっと大きな声出して言え、バカ蛍!」


そう言って、手を振って帰っていった。


『うっさいわ。バカ亜羅汰。』


私の呟きは小さく小さく消えていった。




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その光景を1人の人影が見ていたのを私たちは知るはずもなかった。