あなたに出逢えてよかった。

亜羅汰side


蛍を見つけ、俺が声をかけると案の定蛍は俺のことを無視した。


俺は昼休みに入り蛍を追いかけた後、蛍を見失った。

結局最後まで見つけることが出来ずに教室に戻ったが、授業に入っても蛍が戻ってくることは無かった。

最後の授業まで帰ってこなかった時は流石に何かあったのかと心配にはなったが、俺の校舎案内が面倒くさくて逃げたのかと考えて、帰ろうと思い席から立ち上がった時に森下たちが教室にやってきた。

俺が授業にも出なかったと伝えると、森下は誰が見てもわかるほど顔を青ざめた。

そして、今の今まで3人で蛍を探していた。


『っっ!ありがとうございましたっ!ご心配おかけしてすみませんでしたっ!!!』


俺が顎に手をかけ顔を近づけただけで、顔を真っ赤にし、口をパクパクさせる蛍は誰がどう見ても男慣れしてるようには見えない。

どうして彼女がクラスであのようになっているのか疑問でならない。


「そう言えば、図書館に行って寝てたの?起きなかったって事は相当眠り深かったってことだよね?…えっと、珍しいね?」


優も揃い、蛍の言い訳を聞き終えたあとに森下がどこか言いづらそうにそう言った。


『そうなの。珍しくよく寝れたの。』


そう言って、蛍も少し考え出した。

〝珍しくよく寝れた〟という部分でいつもは寝れていないということが暗に分かる。
言った本人は気づいていそうにないが…。


そして、蛍の一番近くにいた俺さえ聞き取れない程の小さな小さな呟きを零した。

息をするような音だったが、蛍を見ていた俺だけが口の動きでなんとなく読み取れた。

〝管理人〟と言った気がした。

そのあと何が考えるようにしていた蛍の表情が怯えた。

それには、3人とも気がつき蛍を見たが蛍は顔を引き攣らせ急に耳を塞いだ。


「っ!け、けい?」


森下が声を掛けても聞こえていないようだった。

2、3度声を掛け、森下が手に触れると表情が一気に和らいだ。


森下が大丈夫かと尋ねると大丈夫だと言ったが顔色は相変わらず真っ青だった。