取り敢えず、気持ちを落ち着かせて教室まで帰ろうと教室に向かっていると、向かいから夏芽がキョロキョロと誰かを探しているように走り回っていた。
目には少し涙が滲んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
『夏芽?』
声をかけると、バッとこちらを振り返ったかと思うと遂に涙が頬を流れた。
『っ!夏芽?!どうしたの?なんかあった?』
私が駆け寄り肩を掴もうとする前に肩をガッツリと掴まれた。
「どうしたもこうしたもあるかー!!??今までどこいってたの?!何やってたの?!心配…したんだからぁー…ふぇ…うぅ。。」
そう言って、私を抱き締め泣き始めた。
心配掛けてしまった。。
『ごめんね。図書館行ったら寝ちゃって。』
「うぅ…ちゃんと連絡ぐらいしてよぉ…。」
『ごめんごめん。』
そう言いながら、夏芽の背中をポンポンと優しく叩く。
「おい。蛍。今までどこいってたんだよ。」
後ろから聴きたくなかった声が聞こえた。
取り敢えず無視。。
「無視すんな。」
『なんであんたに言わなきゃいけないのよ。』
「こっちはお前が居ないってなって探して歩いてたんだよ。」
『…え?』
なんで?
なんで、鳴海が私のこと探してるわけ?
そう考えていると
「ご、ごめんね、蛍。私がお願いしちゃって…。」
おずおずと私の肩から申し訳なさそうな声が聞こえた。
なるほど、夏芽だったのか。
と、思ってると鳴海は誰かに電話しているようだった。
「…優。あぁ、見つかった…あぁ、じゃあ後でな。」
『も、もしかして、有川くんも探してくれてた?』
ぽつりと言うと、肩で夏芽の顔が縦に動いた。
うわ。やってしまった。
無駄にみんなに心配をかけてしまった。
少しだけ自分で表情が引き攣ったことがわかる。
『…ごめんね。…心配かけたね。』
ギュッと夏芽を抱き締める力を強める。
その強さに負けないくらい夏芽も私のことを抱き締めた。
「…当たり前でしょ。心配ぐらいさせてよ、親友なんだから。」
『…うん。ごめん。』
親友という彼女の言葉の重みに少しだけチクリと胸が傷んだ。

