「じゃあ、そろそろ僕達も教室に戻ろうか。」


「あぁ、そうだね!」


有川くんが時計を見て夏芽に話しかける。

私はそれを見て少しだけ驚いた。

夏芽は、あまり人に懐かない。

はっきり言って、私よりも人への警戒心が強い。

なのに、有川くんに懐いてるように見えた。

私が有川くんを見ていると、隣から声がした。


「浮気すんじゃねーぞ。」


ボソリと言った、小さな小さな声に私の心臓がぴくりと跳ねた。


『浮気も何もあんたと付き合ってないっつーの。それに好きじゃないし。』


教室から出ていくふたりの後ろ姿を見ながら、私も小さく小さく呟いた。

いつの間にか、教室にはいつも通りの風景が戻っていた。