「手出して?」



私は彼に向けて、そっと手を差し出した。



「はい」



「綺麗‥‥」



透明な石だった。



「本当は綺麗な石なんかじゃない。普通の石だ。この石を綺麗かどうかは自分次第。綺麗と思えるその心があるなら、この先どんなことも頑張っていけるよ。」



初めてだった。こんなことを言われたのは。



「‥‥泣いてるの?」



「ううん。私にもこんな感情があったんだって感動してるの。私、もう行くね。」



この場に居たら、私はきっと泣き崩れてしまう。



「最後に君の名前は??」



「夏実!!中本 夏実!!!」




それ以来、海で彼に会うことはなかった。