白と黒

トントン

鈴「奥様。お茶をお持ちいたしました」

扉の外から鈴さんの声が聞こえた

緑「ありがとう、はいって」

ガチャ

鈴「失礼します」

テーブルにお茶を並べる鈴さん

俺はお礼をいい
鈴さんは出ていった

緑「風空はね、元々はすごくいい子だったわ
大人しかったし、わたしが怒る事なんて1回もなかった」

緑さんはお茶を1口呑んだ後、昔を思い出すように遠くを見つめはなしだした

緑「あの日まではね
わたしの旦那さんは勝ち負けをこだわる人で
『負け』をいっさいゆるさない人だったわ
柔道のお稽古で風空は負けてしまったの
旦那はね、それを酷く許さなかった
自分の分身でもあるあの子が負けたなんて
自分が負けたのと同じって重ねていたみたいなのよね…
風空は風空なのに
それから、旦那による、厳しい訓練が始まった
風空は今まで習っていたお稽古、バイオリン、生け花、お習字、英会話…全部辞めさせられたわ、その代わり、ボクシング、水泳、剣道、柔道、合気道、射的、そして旦那による喧嘩の仕方なんかも、習っていたわ…
全部下手したら怪我をする、危ない習い事ばかり、もちろん反対したわ
だけどね、風空が、風空自身がやりたいと
そう言ったの
だから、わたしも応援することにした
子供がやりたいことだもの、止める理由なんてないわ
そして、風空は死ぬ気で毎日習い事をこなしていった、もちろん、勉強もね。その姿はどこか生き生きしていた
12歳になる中学校のときには、全ての師匠を倒せる、1番になっていた
その頃から、風空自身も勝ちにこだわっていたわね、暴走も何度もした、血まみれで帰ってくる事なんてしょっちゅうだった。
勝ちってゆう優越感が欲しかったのかしらね
体力面でも1番に、そして、頭脳でも学年トップに、気づけば、飛び級で頭のいい大学なんかも合格してたわ
でも、なんだかね、飽きちゃったのかしら
この小さな世界に…風空は飛び出していったわ
これからわ1人で生きるって
中学生よ?高校生ならまだしも、さすがに旦那も止めたわ、だけどね風空は最後にこういったの
『もう。お前らなんかの人形になんかなりたくない!もっと世界をみる』ってね
全てが崩れてしまった
ほんとはずっと我慢してたこと気づかなかったのね…わたしたち。
風空は旦那をなぐって、風のように走って行ってしまった。
そして、風空に内緒で、使用人に風空が今どうしてるかを聞いた
黒乱ってゆー集まりを作ってるって教えてもらったから、何度かこっそり見に行ってたの
風空、楽しそうだった、ここにいた時よりもずっと…ずっとね…暴走もなかったらしいから
しばらく風空をほっとくことにしたの。
でも。今もずっとずっと待ってるはあの子の帰りをここで、大好きなたった1人の息子ですもの」

寂しそうに笑って緑さんはまたお茶を呑んだ。