「翼、いつから知っていたんだ?」と父さんの声がした。

いつから居たのか入り口に父さんと母さんが立っていた。

「まだ、記憶が戻る前… 看護師が話してるのを聞いた…」

父さんと母さんは驚いていた。

「芳人さん!翼の今行った事は本当なのか!?」

父さんは何も言わず、母さんは泣いていた。

「芳人さん!?」

「多分…無理だろうって言われてる…」

「そんな…」

恭にぃは落胆した様子で近くの椅子に座った。

「だからって亜美ちゃんを拒絶するような事言わなくても… 翼は今でも亜美ちゃんの事、好きなんだろ?大切に思ってるんだろ?」

「ああ、好きだ!今もこの手で抱き締めたいほど好きだよ!」

「じゃ、どうして?抱きしめてやらない!?亜美ちゃんは待っているんだぞ!?」

「こんな身体でか?」

「車いすの人だって幸せになっている人はいくらでも居るだろ!?障害を持った人が幸せになっていけない訳じゃない!!皆んな誰もが幸せになる権利を持っているんだ!」

「そうだよ、誰もが幸せになる権利を持ってる!だから亜美にも幸せになる権利があるんだ!」

「じゃなぜ悲しませる?」

「亜美は、いや、俺達はまだ高校生だ。亜美はこれから大学へ行き新しい友達を作り新しい思い出を作る。社会に出れば沢山の人に出逢い新しい恋をすることだって出来る。」

「だから翼とだって!?」

「恭にぃ… もし美姫さんが事故に合って車イスになってらどうする?」

「勿論、側で支える!!」

「ああ、俺もそうだよ?亜美が車イスになっても俺は亜美の側で支える!だけど、恭にぃ、自分が障害を持ったら?美姫さんに結婚してくれって言えるか?うちのじぃ様に恩が有るからプライドが有るからと美姫さんを諦めようとしていた恭にぃが体が不自由になっても美姫さんにずっと側に居てくれなんて言えるのかよ!?」

「それは…」

「言えないだろ?俺だって亜美の側に居たい。でも守ってやれないんだ… 転んでも抱き起こしてやることは出来ない… 具合いが悪くて倒れていても抱き抱えて病院に連れて行く事も出来ないんだ…」

「翼…」

「だったら俺ではなく他の誰かに寄り添って貰った方が亜美は幸せになれる…」