俺はいつも窓の外を見てるだけ。

動けないんだから仕方が無い。

俺の母さんという人がテレビを点けてくれた。

そうか今日はクリスマスイブか…

テレビの中の若い女性がサンタクロースの格好をして街でチラシを配っている。

ミニスカートのサンタクロース…

寒い中ご苦労なことで…

サンタクロース…

トナカイ…

ん… 頭が痛い… 

「去年は亜美ちゃん可愛いサンタクロースだったわ!翼はトナカイだったのよ!ウフフ」

あっ…

「母さん?」

サンタクロースの亜美…

何もかも思い出した…

「翼!思い出したの!?母さんが判るのね?」

「うん…判る!」

母さんは涙を流して喜んでくれた。

俺も嬉しかった。

空っぽっだった心が埋まった。

俺には父さんも、母さんも居る。

そして俺には大切な… 大切な亜美…

母さんは父さんに連絡して来ると言って病室を出て行った。

今、心が埋まって嬉しかったのに…まるで崖から突き落とされた様だ。

どうして…どうして思い出した?

空っぽっだった心は埋まったが、俺はもう歩けないんだぞ!?

俺は一生車いすのままなんだ…

こんな体じゃ亜美を守ってやれない!?

それなら思い出さない方が良かった…

クッソー!!

でも、父さんと母さんは、俺の記憶が戻った事を喜んでいる。

父さんや母さんには悪いが喜べない。

俺はどうしたら良い…