私がここに居るのが辛いだろうと思って考えてくれたんだね?
パパとママの優しさに涙が溢れる。
「あら?泣くほどママの料理が恋しかったの?」とママは笑う。
「違うわよ!お年玉がお金じゃなかった事が悲しくて泣いてるのよ!」と私も笑う。
一史もホントだよな!と言うとパパは仕方ないなとポチ袋を出してくれた。
勿論ポチ袋にはお札が入っていた。
私にもこうやって心配してくれる大切な家族がいる。
もう泣いてなんか居られない。
私の大切な家族の為にも頑張らないと!
そして、翼が私を思い出した時に悲しませない様に…
必ず第一志望に合格してみせる!
食事を済ませると直ぐに席を立つ。
「亜美?もう食べないの?」
「うん、ママ美味しかったよ!ご馳走様。」
「亜美、お正月くらい… せめて今日くらいはゆっくりしたらどうだ?」
「最後の追い込みだもん頑張らないと!受験生にお正月なんて有りません!一史も頑張りなさいよ!」
「ご心配なく!俺は特待なの!」
「呑気な奴は良いね!?」
それからは今までの分を挽回する様に寝る時間も減らし、食事する時間も惜しんで机に向かった。
翼に会いたい… それさえも思い出さない様に受験勉強に励んだ。
センター試験当日
ママはお店を休んでくれた。
落ち着いて仕事なんてできないからと。
ママが試験を受けるんじゃないのに…
「じゃ、いってきます!」
玄関を出ると美智さんが居た。
「亜美ちゃん、おはよう!」
「美智さん… おはようございます。」
どうしたのだろう…
まさか…
「翼が?」
「ううん…変らない…」
「そうですか…」
「これ御守。それから…これも持って行ってくれないかな?」
それは翼の受験票だった。
翼が受ける事の出来ないセンター試験の受験票…
「はい!翼の分まで頑張ってきます!」
御守も嬉しいが、翼の受験票を持たせてくれた事が何よりも嬉しく私の力になる。
私は一人ではなく翼と一緒に試験を受ける。

