あれから一史は元のサッカークラブチームに戻り、高校受験の事などなんのそので勉強に力を入れずサッカー三昧に戻っていた。

母は美智さんのサポートで、私達が元住んでいた家を改装しイタリアの家庭料理のお店を先月オープンさせた。

そして私と翼は今までと変わりなく一緒に登下校し、生徒会活動に大学受験勉強にと励んでいた。

ただ変わったのは同居人からお隣さんに変わっただけで、食事は坂井家で一緒に食べる事も多く翼とはほとんど一緒にいるから何も変わった様には感じない。

10月には生徒会も任務を終了し、2年生へと引き継ぎを済ませた。

12月に入り今年のクリスマスもふた家族一緒にパーティーをしようと話していた。

去年は翼にクリスマスプレゼントは用意出来なかったけど、今年は何かプレゼントを用意したいと思い、街を歩いていた。

すると道の反対の通りを翼が歩いていた。

翼だ!

「つ、ば、さー!」大きな声で呼ぶと翼は私に気が付き、ちょうど信号が青になり、翼が横断歩道を駆けてくる。

その時猛スピードで走ってくる車が!

あっ!と思った時には翼は宙に飛んでいた。

「いっやー!!」

地面に叩きつけられた翼に駆け寄り体を抱きかかえようとすると側に居た人に制された。

「ダメ!!頭を打ってる!動かしたらダメ!!」

悲鳴と救急車を呼べと言う声に混ざり、車から降りて来た放心状態の若い男に誰かが怒声を浴びせている。

お願い…誰か翼を助けて!!…

道路に横たわる翼の頭からは真っ赤な血が出て当たりを見る見るうちに赤く染める。

私は翼さえ居てくれたら何も要らない。

お願い!

お願いだから神様翼を助けて!

次第に聞こえて来た救急車のサイレンの音。

泣き叫ぶ私に

「しっかりしなさい!」と女性の声。

なにを?何をしっかりすればいいの!?

「あなたは彼の知り合いなのね!?」

ただ頷く私。

救急隊の人にその女性は説明をし、私と一緒に救急車に乗ってくれた。