ふたりで校門まで歩いて来る頃には19時を回っていた。

「翼、急がないと?」

「いや、亜美と一緒に帰るよ」

「え?お仕事で人と会うんじゃないの?」

「俺じゃなくて恭にぃの相手なんだ」

「もしかして美姫さん?」

「ああ、うちの傘下に入る事もほぼ決まったよ。午前中に父さんからメールが入って美姫さんの両親からはお願いしますと言われたそうだ。後は美姫さんの返事次第。この話を受けるか、どうかは恭にぃと話をして決めてくれって美姫はんには言ってある」

「そっか?じゃ決まりだね?」

「ああ。で、母さんに迎えを頼もうと思ったけど?」

「ねぇ?学校の皆んなには付き合ってる事バレてるんだから、一緒に電車で帰ろう?」

「足大丈夫か?」

「うん!痛くなったら翼におぶって貰う」

「わかった無理するな?辛くなったら直ぐに言えよ?お姫様抱っこしてやるから」とニヤッと笑って言う。

町中でお姫様抱っこなんて無理です!
いや、町中じゃなくても無理!
絶対に痛くなっても言わない!

その日の夜、お風呂から出てきたら翼はリビングで電話をかけていた。

「なんだよ!?気持ち悪いな!?   

気持ち悪いもんは気持ち悪いだろ!?   

だろうな?

明日は迎えに来なくて良いから」

と、言って翼は電話を切った。

「恭之助?」

「ああ。商談成立だと!」

「そっか、良かったね?」