18時30分、恭之助はホテルラウンジでスマホを何度も確認しながらコーヒーを飲んでいた。


「翼、まだ生徒会は終わらないのか?取引先の名前も顔を知らないのにどうするんだよ!?」

恭之助は19時にレストランと言われていただけで相手がどこの企業でどんな人なのか聞かされていなかった。

その為翼にLINEを入れたがまだ既読のマークすら付かない。

後で情報を送ると言っときながら何も連絡をよこさないとはどう言うつもりだ!?

「可怪しい…彼奴が何も情報を渡さず短時間でも俺に代わりをさせるのは絶対に可怪しい」

俺は翼からの連絡のない事にイライラしてテーブルを指でトントンと叩いていた。

「お待たせしました」

聞き覚えのある声。

振り向くと会いたくても会えずにいた美姫が居た。

綺麗な長い髪を短く切り、少し痩せた美姫が居た。

なぜ? 

なぜ?美姫がここに居る。

「そんなに苛ついていては上手く行く商談も上手く行かなですよ?」

「どうして?…」

「申し遅れました。私、ココ・スギヤマの杉山美姫と申します。この度はとても良いお話を頂きまして有難うございます」

美姫は名刺を差し出し俺は呆けながらもその名刺を受け取った。

「良い話?」

「今朝、そちらのサカイグループの社長さまからグループ会社の傘下へとお誘いのお話を頂きまして、そのお返事はこちらで待って見える方ともう一度話をよく聞いてから返事をする事になっていますが?」

「え?社長が傘下に?返事は俺?」

違う俺じゃないよな!?翼が後から来るから詳しい話は翼が来てからするんだろう…

「ビジネスの話をここで立ち話するのはどうかと思いますが?」

「あっああ、すいません。担当者は少し遅れて参りますので先にお食事でも如何でしょか?上のレストランに席をご用意して有りますので」

「ええ喜んで」

美姫とふたりでレストランへ向かい、翼が来るまで食事をして待っている事にした。

食事をしている間は他愛も無い話をしていた。

聞きたい事は他にあるのに…

今日、見合いだったんだろ?

相手は俺より格好良いか?

俺より優しいそうな奴か?

俺より美姫の事を大切に…

そんな事聞ける立場じゃないよな!?

でも、お前の幸せはずっと祈って居るから幸せになってくれ…