ついに一華が走り出す。
いつになく真剣な表情に釘付けになっていた。
なんといちばんで飴玉までやってきて、どうするのかと思ったら躊躇いなく粉の中に頭を突っ込んだ。
「えぇっ!?」
思わず声が漏れる。
思い切りよすぎだろ!
アナウンスも思わず突っ込んでいた。
でもそんな一華は、借りもの競争の紙を開いた瞬間固まった。
なにが書いてたんだ?
やっぱり、勇気でないんじゃ・・・。
走行しているうちに追いつかれた。
その時
「よ、洋介さん!洋介さん!いますか!?」
一華は、そう叫んだ。
お、おれ!?
呆気にとられ、返事をするのに遅れた。
でも、一華が頑張ってるのに、俺が足を引っ張れないし。
「一華」
戸惑いながらも出ていく。
なにかを言う前に俺の手を掴み、
「一緒に来て!私と、走ってください!」
そう言った一華を拒否るつもりは毛頭なくて、一緒になって走った。
恥ずかしいとか、なんて書いてあったのか、とか。
そんな事は一つも考えられなくて。
ただ、もう学生ではない俺が、一華と一緒にグラウンドを走れたことが。
今だけは、同じ場所に立ってる、そんな幻想を抱くくらいに、浮かれてた。


