「・・・す、すみません。その」
「・・・ああ、お前。あんときのガキか」
合点が言ったように声をあげると、男の人は私に向き直った。
思い出してもらえたんだ。
ガキってのは、余計だけど。
「あの、この間はハンカチありがとうございました」
「ああ。別にあんなの安もんだし」
「それで、その。・・・・あ!」
そこまで言って絶望的な事を思い出した。
ハンカチ。
持ってきてない!
まさか土曜日に会うなんて思ってなかったし。
家に置いてきちゃった・・・。
こんなチャンス、もうないかもしれないのに。
「すみません・・・。ハンカチ返そうとしてたのに。今日に限っておいてきてしまって・・・」


