気づいたら寝ていたらしい、もう18時を回っていた

寝過ぎたか
このあと用事がなくてよかった、
そうつぶやき屋上を出た


下駄箱に行く途中、色々な教室の前を通る

音楽室、CP室、図書室、そして美術室...

いつもと変わらない見慣れた景色


でもその日は一つだけ違った

そこにあったのは1つの絵
美術室の中、真ん中にあった大きな絵
キャンバスに描かれていたのは綺麗な蒼、澄んだ青空
ただそれだけの絵に、今までにないような惹かれるものがあった
ただずっと、見ていたかった
目が離せなかった

?「あれ、先生?」

突然の女子の声に驚き振り向く

?「あ、違った...」
『す、すみません、勝手に入っちゃって...』
?「いや、大丈夫よ」

黒髪のロング、真っ直ぐな目をし整った顔をした少し静かそうな女の子
ネクタイの色が同じだから2年生か

?「...?どうしたの?先生なら職員室にいるはずなんだけど...」

黙り込んでいた僕に彼女は話しかけた

『なんでもない、かな。ただ見てただけ』

彼女は一瞬きょとんとしたものの、すぐにハッとなり

?「その絵?その絵なら私が描いたの、まだ未完成だけど」
『君が描いたの?!』
?「う、うん。そうだけど...」
『すごく、綺麗だ...僕この絵好きだよ』

純粋に出た言葉。
彼女の顔は少し赤かった

?「...そんなこと言ってくれる人なかなかいないよ」

少しだけ俯いて呟くように言った

『そうなの?だってキャンバスの上に新しい世界があるようで、それで、えっと...そう!絵って人の心映すっていうじゃん?きっとこんな絵がかけるってことは君も綺麗ってことじゃん!』

正直、自分でも何を言ってるかわからなかった
でもこの絵の美しさを伝えたくて必死になって言葉を探した

?「ふふっ、あははっ」
『え?』

突然笑い出した彼女に戸惑いを隠せなかった

?「あなた面白いね、名前は?」
『僕は久城 奏音。君は?』
?「私は七瀬 梨乃、よ。よろしくね」
『七瀬?OK、覚えとく!』
梨「それよりも、帰らなくていいの?」

気づけば19時をまわっていた

『もうこんな時間か!じゃあそろそろ帰るわ、七瀬は?』
梨「私はもう少ししていく、あと鍵も先生に届けないとだし...」
『...そっか、気をつけて帰れよ?』
梨「わかってるわ」

そういい美術室の出口まで歩き、振り返って言った

『その絵、完成したらまた見せろよ!』
梨「ふふっ、わかった!またねっ」

手を振り返し、学校を出た