1週間後、私は岡本先生の元へ向かっていた。
「失礼しまーす」
「おお。来たか」
「はい。」
先生は窓から外を眺めてこっちを向かない。
その姿はまるで何かを隠しているような……。
「先生。本当のことを教えて下さい。」
「そうか、もう明日卒業なのか……早いな。」
「先生っっっっっ!!!!!!」
「変わらないな」
「へ?」
「あの頃から真夏は変わらない。」
真夏って言った。
あの頃??
「覚えてるハズないよな。もう10年も前の話だ。」
「どうゆうことですか?!」
「だって記憶を無くしてるんだからな。真夏。」
記憶……??
『偉い子だ。』
『私大きくなったら学校のせんせーになるっっ!!』
あ……。
「偉い子だな。」
先生……??
やっぱり。やっぱりそうだ。
岡本先生は……
「しげるお兄ちゃんだよね?」
「真夏っ?!?!?!記憶戻ったのか?!」
「この1年間ずっと考えたの。小さい頃何があったのか。でも、やっぱり思い出せなかった。」
「……」
「でもね、夢にいつも出てくる男の子って岡本先生なんだよね?」
「…………」
「この間アルバムの最後のページに挟まってた。」
私の目から1粒の涙が零れ落ちた。
「ほら私しげるお兄ちゃんと楽しそうに写ってる」
「真夏……」
「このことお母さんも話そうとしないのは当たり前だよね。だってお兄ちゃんとは生き別れの兄弟なんだからさ……」
とうとう我慢が出来なくなった私は泣き始めた。
「初めてこの学校に来た時すぐに分かったんだ。真夏のこと。10年も会ってなかったから……すごいびっくりした。」
「……ぅん」
「真夏はあの日交通事故にあったんだ。」
事故……??
そういえば……
『お兄ちゃんーっ!ボールいったよ!』
『分かってるって!』
『ボールがっ!』
私はそのままボールを追いかけて道路に飛び出した。
『真夏ーーっ?!?!?!?!』
「あれから真夏は記憶を失ったんだ。母さんと父さんはそのことをきっかけに離婚した。目の前にいたオレなのに助けることができなかったんだ。」
びっくりしすぎていつのまにか私の涙は止まっていた。
「多分母さんは意識を取り戻した真夏の記憶がないことに気づいて新しく記憶を作ったんだ。もともと2人家族ってことにして」
「てことは、本当は……」
「父さんも生きてる。」
うそ……。
「また昔みたいに戻れる??」
「それは……分からない。」
「そっか。」
「でもオレはまた4人で暮らしたい。」
まさか先生の口からこんなことが聞けるなんて思ってもいなかった。



