ひとりになった俊くんのところへ、なんとなくゆっくり近づいていった。
「観光客のひと?」
「……あ、うん。行きたい店があったらしいけど、俺もわかんなかったから、とりあえず地図に載ってる建物の方向だけ説明した」
「そっか……このへんで旅行客とか珍しいねえ。有名な観光スポットとか、あんまりないのに」
「……そう?俺は結構、道尋ねられるけど」
「……それは………」
たぶん、イケメンだからだろう。
わかるよ、絶対ほとんど女性でしょう。過去に俊くんに道尋ねたひと、ぜんぶホントに旅行客だったか怪しいぞ。
思ったけど、さすがに『イケメンだから』とは言えなかった。
ちょっと笑って誤魔化して、「私が観光客に話しかけられないだけなのかなぁ」なんて言っておいた。



