彼はそっと私の手からパスケースを受け取る。
その間、何故かずっと驚いた様子で彼はこちらを見ていた。
どうしてだろうかとよく考えてみたら、さっきまで自分が泣いていたことを思い出した。
もしかしたらアイメイクが崩れて、顔面が大変なことになっているかもしれない。
今日はマスカラしてないからそこまでじゃないと思うけど、アイラインが滲んでひどいことになってるかも。てゆーか絶対目が充血してる。
「……あ、じゃあ、これで……」
ぱっと顔を下に向けて、小さくお辞儀した。そのままサーっと彼の横を走り抜ける。
ひええ、恐れ多いタイプのイケメンと会話した!会話した!一言だけだけど!
私は男友達も多いし、中にはフツーにカッコいい奴もいるけど、あんなホンモノのイケメンは少ない。ていうかいない。
友達は大体が雰囲気イケメンというやつか、顔は良くてもチャラチャラした奴ばっかりだ。



