「その…すごいどうでもいい話にはなるんだけど。私のおじいちゃんがね、『何事も楽しい』がモットーの人で、とにかく行動力がすごかったの。『世界一周旅行が楽しそう』って思い立ったら、一週間も経たないうちに旅行に出て、半年帰ってこなかったり」
あのときの家族の焦りようは恐ろしかった。齢62にして連絡が取れなくなった祖父を探し、一時は警察に相談しようなんて話も出た。
「『楽しそう』って思ったことは、片っ端からやっちゃう人だったの。その分、周りは苦労しまくりだったけど……でも、おじいちゃんが病気になって亡くなる直前、『本当に楽しい人生だったなあ』って言ってたんだ。ほんとーに幸せって顔して」
当時、私は小学六年生だった。
私は幼い頃から、祖父の自慢の冒険譚や遊びを教えてもらうのが大好きで、立派なおじいちゃん子だった。
病床で死を待つだけになった祖父のことを考えると、悲しくてたまらなかったけれど、彼のその言葉を聞いて、少し心がホッとしたのを覚えている。



