すごすごとカウンターの方へ戻っていく。
「ちょっと、俊ちゃ〜ん?」
すると、普段は店の奥に引っ込んでいる店長がニヤニヤしながら俺を呼んだ。
店長はガタイのいい男性で、おせっかい焼きなオネエだ。
この前、俺と佳菜が水族館に行けたのはこの人がくれたチケットのおかげでもある。
「……なんですか」
「彼女、意外なタイプねェ?俊ちゃんならもっとおとなし〜子を好きになるんだと思ってたワァ」
「……よく言われます」
佳菜と付き合ってから、何度『意外』と言われたかわからない。調理場の店員まで俺の様子を伺っている。
その視線がいたたまれなくてフロアの方に目を移すと、ちょうど佳菜がメニューから顔をあげて手を挙げていた。俺が気付いたのに気付くと、嬉しそうに手を振ってくる。可愛い。
「……ご注文をお伺いします」
「えへへ。えっと、キャラメルラテとー、チョコレートケーキをお願いします!どれも美味しそうですっごい迷ったよ~」
佳菜はメニューを眺めているだけで可愛いからすごい。
ただのバイト先であるいつもの通りのカフェの風景が、佳菜がいるだけで鮮やかに色づく。



