「あ、あの……これ、落としましたよ」
差し出されたのは、俺のパスケースだった。
わざわざ走ってきてくれたのか、彼女は息を切らしている。
その目元はちょっと赤かったけれど、俺の顔を見た瞬間、パッチリとした瞳を大きく見開いて瞬かせた。
さっきまで声を上げて泣いていたことなんて感じさせない、はつらつとした表情。
……あれ?この子、どこかで。
見た気がすると思ったけど、そのときはすぐにわからなかった。
彼女が肩で息をするたび、ゆらゆら揺れるポニーテールを無意識に目で追いながら、俺は「……ありがとうございます」と返した。
彼女の手からパスケースを受け取る。
派手なネイルをした白い手を見て、ぼんやり『やっぱりギャルだ』と思いながら、でも不思議と苦手だとは思わなかった。
すると、彼女はいきなりハッとした顔をして「あ」と声を上げた。



