「あれから佳菜と付き合うようになって、どんどん好きになっていったと思う。でも、俺の中でなかなか『好き』って名前の感情に繋げられなかった。女の子とこんなに仲良くなることも、こんな気持ちになることも今まで無かったから」


……俊くんは、真っ白な男の子だ。


何にも汚されず、誰にも染まらず、純粋なまま。彼は彼のペースで物事を考える。


私はそれが俊くんのいいところだとも思っているけど、同時にもどかしい部分でもあった。


はやく、はやくこっちを向いてって。


少しでもいいから、その真っ白い紙の上に私の色を載せてほしいって。


「たぶんこれを『好き』って言うんだろうと思ってたけど、自分でもよくわかってない適当な気持ちで言いたくなかったんだよね。佳菜は真っ直ぐ正直に伝えてくれるから、俺も適当にしたくなかった」


俊くんは自嘲気味に目を伏せて「これも言い訳だけど」と言った。


……ううん。



「俊くんのそういうとこ、好き」



自分の気持ちに相応しい言葉をちゃんと探して、正確に伝えようとしてくれるとこ。誠実だと思う。