彼は俯いている私の手を取ると、申し訳なさそうな顔で私の顔を覗き込んだ。
「……ごめん。俺、さっきも考え事してて……」
「考え事って、何?」
私の声は、自分が思った以上に怒っていた。
だって。
言ってくれなきゃわかんないもん。
「……私のことを考えてくれてるのかもしれないけど、言ってくれなきゃわからない。それで目の前の私のことを見てくれなくなるのは、もっと意味わかんない」
「………………」
沈黙が落ちた。その間、私は彼と目を合わせなかった。
自分でも不思議なくらい怒っている。
俊くんもさぞ困っているだろう。トイレに行く前はニコニコしてたのに、なんでいきなり怒るんだろうって。
30秒、目の前の私に気づくのが遅れただけ。
それだけだ。
正直、普段の私なら何も気にしなかったと思う。俊くんだし、で流してた。なんならもう1分くらい待ったかもしれない。
でも。
なんか、今日の俊くんの様子がおかしいから。それを私に隠すから。



